論文が出版されました
荒木さんとの共同研究が論文になりました!
Araki, A., Noshita, K.* Theoretical morphological analysis of differential morphospace occupation patterns for terrestrial and aquatic gastropods. Evolution (2023). https://doi.org/10.1093/evolut/qpad110
Tweetのまとめ
Twitterでざっくりした解説をしましたのでまとめておきます.
論文が出版されました!荒木さん(https://t.co/7ccxvpMsTM)との共同研究です.
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) June 28, 2023
Theoretical morphological analysis of differential morphospace occupation patterns for terrestrial and aquatic gastropods https://t.co/CW8HHsi114
腹足類(巻貝)の殻形態が陸棲と水棲で異なる形態空間占有パターンを示すことを博物館標本の計測から明らかにし,
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) June 28, 2023
その差がなぜ生じたかを理論形態学的な解析により検討しました.
生物の形態はそのデータが分布する空間(形態空間)の全域には分布せず,偏った占有パターンを示すことが多いことが知られています.
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) June 28, 2023
機能的要請,生息環境,発生的・構造的・系統的制約の下での進化プロセスによって,こうした形態的多様性がかたちづくられてきたためと考えられています.
本研究では,陸棲種が水棲種よりも高い殻口の傾きを示すことを明らかにしました.
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) June 28, 2023
この差は,陸棲種の二峰分布の一方のピークの存在と,螺塔が高くない場合でも低い殻口の傾きをもつ種が水棲種に一定数観察されることの両方により生じています.
この生息環境に対する異なる形態空間占有パターンの違いが生まれた究極要因を明らかにするため,殻形態の理論形態モデルであるRaupのモデル(の拡張版)を用いて,
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) June 28, 2023
様々な螺塔の高さと殻口の傾きをもつ仮想的な殻形態を生成し,解析をおこないました.
理論モデルに基づき,「殻の不安定性」と「投影面積」を計算し,機能性の指標としました.
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) June 28, 2023
その際に,二通りの仮想的な姿勢を仮定し,より機能的な姿勢を採用することにしました.
その結果,陸棲種が安定かつ投影面積の小さい(邪魔になりにくい)殻をもつ傾向があることが明らかになりました.
一方で,なぜ螺塔が高くない場合でも低い殻口の傾きをもつ水棲種が一定数観察されるのかは機能的な殻形態の観点からは説明できませんでした.
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) June 28, 2023
この螺塔が高くない場合でも低い殻口の傾きをもつ形態空間の領域では,成長方向を接地面に垂直にする姿勢でより機能的になります.
そこで,機能的制約が陸棲種に比べ水棲種で緩く,水棲種は成長などに有利と考えられる姿勢を取ることができるのではないか,
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) June 28, 2023
またその結果として形態空間占有パターンの違いが生じたのではないかという仮説を提案しました.
(今後飼育実験や野外調査で検証されると嬉しいです.)
形態空間という解析ツール上に色々な情報を集約することでこうした結果が見えてきました.
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) June 28, 2023
うまく使えば(可視化だけじゃない)強力なツールになると考えています.
ぜひ皆さん形態空間解析やっていきましょう!!
余談ですが,Advance Articlesの中でVermeij先生の"隣"になって,密かに嬉しかったです. pic.twitter.com/no4z6qdGga
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) June 28, 2023