岩政さんとの共著論文が出版されました!
Iwamasa, K., Noshita, K.* Network feature-based phenotyping of leaf venation robustly reconstructs the latent space. PLOS Comput. Biol. (2023) 19, e1010581. https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1010581
プレプリント投稿やプレスリリースなど新しい取り組みにもチャレンジし,良い経験になりました.
最後に改めて,データセットを利用させていただいた国立科学博物館 葉脈標本データベースに感謝いたします.
Tweetまとめ
岩政さん @colum2131 との共著論文が出版されました 🎉 葉脈ネットワークの定量化とその潜在空間を特定した研究です 🍃
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) July 21, 2023
Network feature-based phenotyping of leaf venation robustly reconstructs the latent space https://t.co/VlhUDMxDOa
植物の葉脈は水や光合成産物の輸送に関わるネットワーク状の構造です.そのため生理学的には透水性や蒸散効率に関わる重要な形質です.特に,被子植物の葉脈は階層的で複雑な葉脈構造を示し,分類の際にも注目する形質と考えられています.
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) July 21, 2023
こうした葉脈構造の評価は,比較的シンプルな計測値(長さ,直径,分岐角度,areole面積,単位面積あたりの長さなど)でおこなわれるケースがほとんどでした.しかし,本質的には輸送網(ネットワーク構造)として定量化することが望ましいです.
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) July 21, 2023
そこで本研究では,葉脈構造をネットワークとして定量化するための手法を開発し,その有用性を示しました.提案手法は1.画像の取得,2.U-Netによる葉脈の抽出,3.無向グラフへの変換,4.ネットワーク特徴量化,からなります.
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) July 21, 2023
1.画像の取得.葉脈の観察を行う際には,透明化染色標本を用いることがありますが,処理に時間がかかります(~2週間程度).今後のデータサイズの拡大を狙いハイスループットな手法として,シンプルな透過光による画像撮影方法を採用しました.https://t.co/gcNFbZIeaE
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2.U-Netによる葉脈の抽出.葉脈だけを抽出するためにセマンティックセグメンテーション向け深層学習モデルであるU-Netをもちいました.このモデルはグレースケール画像を入力にしており,染色標本・非染色標本の両方に適用できます.
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) July 21, 2023
U-Netの訓練のキモとして,”キレイな”画像だけのデータセットに古典的な画像解析を施すことで訓練データを用意した点があります.これによりアノテーションデータの作成の労力を抑えることができました.
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3.無向グラフへの変換.葉脈だけを抜き出した二値画像から細線化により,葉脈のスケルトンを取得し,このスケルトンに基づいて分岐点,端点を探索し,それらを結ぶことで無向グラフを構築しています.ここまでを適用すると以下の通り🙌 https://t.co/mEm8eK68fu
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) July 21, 2023
4.ネットワーク特徴量化.無向グラフからNetSimileというサイズ不変なベクトル表現を計算し,これを葉脈構造の特徴量としました.この特徴量に基づき様々なデータ解析や可視化をおこなうことになります.
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) July 21, 2023
デモンストレーションとして,まずこの葉脈特徴量だけから伊都キャンパスでサンプリングした5種の葉を見分けることができるかを検討し,その結果およそ90%の精度で見分けることができました.
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) July 21, 2023
つまり,分類群特異的な構造情報をある程度含んでいる特徴量になっているだろうと考えられます(単純なクラス分類の問題を解きたい場合は葉の形状やテクスチャなどを含む画像情報も使ったほうが良いと思います).
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) July 21, 2023
そして本研究のハイライトは葉脈構造の潜在空間を特定できた点になります.伊都キャンパスでサンプリングした5種479枚の非染色葉標本と国立科学博物館 葉脈標本データベース(https://t.co/2wY74R8hE9)に含まれる5属328枚の染色標本の解析しました.
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葉脈構造特徴量の主成分分析の結果,PC1とPC3の空間に1次元的なU字型の分布を見出しました.またこの曲線にそって葉脈の高次構造がツリー状からループ状に遷移していることがわかりました.https://t.co/SOvPyPYxVD
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) July 21, 2023
この分布パターンはRonellenfitsch and Katifori (2019) https://t.co/16eQswjQnW で理論的に予測された輸送効率,形成効率,損傷に対するロバスト性のパレート最適(いずれかの機能を改善しようと葉脈を変化させるとそれ以外が低下する)に対応する可能性が高いです.
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) July 21, 2023
葉脈構造をネットワーク特徴量として定量的に評価したことで,データ駆動的にその潜在空間を特定し,「かたち」の多様性と制約の理解へつなげることができたと考えています!
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) July 21, 2023
今回の解析には国立科学博物館 葉脈標本データベース(https://t.co/2wY74R8hE9)を利用させて頂きました.こうしたデータセットが整備・公開,そして維持されていることは本当にありがたいです.
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) July 21, 2023
はじめてプレスリリースしてみました.ツッコミどころ有りましたらご指摘いただけると幸いです.今後へ活かしていこうと思います.色々調整をおこなって頂いた広報や編集部などのみなさま,ありがとうございました!
— 野下 浩司 / Noshita, Koji (@noshitakoji) July 21, 2023
九州大学:https://t.co/KHPb7YWGAD
JST: https://t.co/n9lES0t8EN